2021年2月3日水曜日

『雪割草の花』石川欣一


十銭といったところで、単位が書いてないから、一株十銭なのか、一たば十銭なのか、わからない。とにかく五十銭出すと、小僧さんが大分たくさんわけてくれた。新聞紙で根をつつみ、大切にして持って帰った。


私が夫婦げんかをしてまで大事にしていた鉢の雪割草は、この小さな野蛮人――美食家なのかもしれぬ――のために、ついに一つも咲かずにしまった。だが、こんな騒ぎをしているうちに庭に植えた分は皆、スクスクと健全な発育をとげて、毎日、次から次へと新しい花を咲かせている。


https://www.aozora.gr.jp/cards/001380/card57357.html

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