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2021年2月4日木曜日

『草舍にて』三好達治


それはまるで夏の日の日の暮れ方、とある街角をくる風鈴賣りの、あの毀れ易い硝子の器を百も吊るした、人の肩に擔はれてくる小さな輕い華やかな店さきの、音樂! その商品の一つ一つが互に囁きあつてゐる、ひそやかなれども騷がしい、いつも一つのものでありながら、けれども單調といふのでない、即興歌のより集り。


2021年2月3日水曜日

『間花集』三好達治


蜂の羽音が
チューリップの花に消える
微風の中にひつそりと
客を迎へた赤い部屋

『柘榴の花』三好達治

万物の蒼々たる中に柘榴の花のかつと赤く咲きでたのを見ると、毎年のことだが、私はいつも一種名状のしがたい感銘を覚える。近頃年齢を重ねるに従つて、草木の花といふ花、みな深紅のものに最も眼をそばだて愛着を感ずるやうに覚えるが、これはどういふ訳であらう。



私にはいつも、自然は強大な或は繊細なあらゆる美の手段をつくして、沈滞する人の心をつねに眼ざめしめようと、人人の心に向つて不断に好機を捉へようとして待ちかまへてゐるもののやうにさへも思はれる。私の心がたまたまさういふ機縁にふれて、何かしら直截な生命感とでもいつていいやうな、そのまますぐと納得のゆくある感じでもつて眼のさめるやうに覚える時、私はまたいつも、自然の方の側に不断にその用意の整つてゐたのがほのかに推し測られるやうにさへも思はれるのである。


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