2021年2月3日水曜日

『紫陽花』泉鏡花


呆れし少年の縋り着きて、いまは雫ばかりなる氷を其口にしつ。腰元をゆるめたれば、貴女の顔のけざまに、うつとりと目をみひらき、胸をおしたる手を放ちて、少年の肩を抱きつゝ、ぢつと見てうなづくはしに、がつくりと咽喉に通りて、桐の葉越の日影薄く、紫陽花の色、淋しき其笑顔にうつりぬ。


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