2021年2月3日水曜日

『梅花の気品』豊島与志雄


気品はこの世に稀である。それは地上のものというよりも、寧ろ多く天上のものであり。この地上に在っては、その本来の面目を汚されるというのではないが、そこに在るにはあまりに清らかすぎる。然しながら、それを地上に引下して、己が所有とした所に、人の魂の朗かさがある。地上から天上へと人の魂がかけ渡した、多くの橋梁のうちの一つが、其処にあるとも云い得らるる。それ故に、気品は一の抽象であって、一の具象ではない。随って気品は、如何なる人にも親しまれ易い。


https://www.aozora.gr.jp/cards/000906/card42475.html

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