2021年2月3日水曜日

『あじさい』佐藤春夫


女はふと自分の背後をふりかえって見なければならなかった。そこにはしかし、もとより何もなかった。ただ病み疲れた子供は、痩せおとろえて一そう大きく一そう透明になった黒い瞳をぱっちりと見張って、母の肩ごしに、空間を、部屋の一隅をいつまでも凝視した――。


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