2021年2月5日金曜日

『若菜のうち』泉鏡花


竜胆
の影が紫の灯のように穂をすいて、昼の十日ばかりの月が澄む。稲の下にも薄の中にも、細流(せせらぎ)の囁くように、ちちろ、ちちろと声がして、その鳴く音の高低に、静まった草もみじが、そこらの刈りあとにこぼれた粟の落穂とともに、風のないのに軽く動いた。


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